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適当日記。文について、CPが特に明記されていないものは南赤の方にも赤南の方にも読めると思われます。
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朝早く起きすぎてレポート終わってから時間が余ったので。


うちのssってエロ以外はほぼ南赤だよなーと思わなくも無いです。
というかまた当初の予定から外れまくりました。

えっと、ノートの間にくるやつの後編ですw
1はこっち→呼ぶ声1

若干修正しました(21時くらい)


****


アパートへの帰り道には極力濡らさないように気をつけていたスーツの裾は、膝下までぐっしょり濡れていた。漸くたどり着いた病院のロビーにはかろうじて明かりがついており、尋ねるともう暫くなら面会も許されるという。
「ただ、面会可能時間は20時までになりますので、それまでにはお帰りくださいね。あと20分程度になりますが」
言外に明日出直してくれないかと言わんばかりに、看護婦はわざとらしく時計を見つめた。
「はい、そうさせてもらいます」
「あ、ところで何号室にご用でしたかしら?」
「753のアカギです」
南郷はへこへこと頭を下げながら言う。久々に全力疾走したものだから、荒くなった息がなかなか戻らなかった。早く早くと、とにかく気が急いた。
「753…、」
看護婦は一度手元に目をやり、それから南郷を見つめて眉を寄せる。
「失礼ですが、赤木さんとはどういったご関係で?」
「ああ、ええと、似てないんですがね、親戚です。叔父と甥っていうか。」
慣れたもので、実は何度目かになる嘘をつく。
赤木と共にいると大概この質問をされる。まさか親子には見えないし、友人というにはどうにも釣り合わない二人だった。そのため、あの晩ついた出まかせに今でもそのまま頼ってしまっているのだ。
「ああ、なるほど。確か付き添いの方が、叔父さんがみえるかもしれないからよろしくとおっしゃっていましたわ。」
「あはは」
頭をぽりぽりと掻きながら南郷は苦笑いする。
と、はっと気付いた。
「あ、すいません!それじゃあ時間もないことですし、」
「ええ、くれぐれも時間にはお気をつけくださいね」
もちろんです、言いながら南郷はまたはっと気付いた。そういえば…!
再度申し訳なさそうに話し掛ける南郷に、看護婦は少し驚き、それからうなずいた。
 
 
*******
 
病室の電灯は薄暗かった。階段を一気に駆け登った南郷は、日頃の運動不足やら諸々がたたり、ほうほうの体で立ち尽くしていた。肩で息をしながら周りを見回す。
四人部屋であろう四角い箱の中には、赤木ひとりしかいなかった。
看護婦の応対からその線は薄いだろうと思ってはいたが、安岡達と鉢合わせなかったことに少しほっとする。
彼も、赤木とはまた違った意味で人を食って生きている人間だった。どうにも苦手だという意識は、かつてから拭いきれるものではなかった。こうしてわざわざ連絡をもらった身で言う事ではないかもしれないが。
 
早足で赤木に近付いた。
 
瞼を閉じ、微動だにしない白髪の青年は、まるで呼吸をしていないかのように青白かった。
唇が乾いていて、血色が悪い。
布団からはみ出した首筋に見える幾重もの包帯が痛々しくて、南郷は顔をゆがめた。
「…アカギ?」
眠っているのだろう赤木に反応はない。
恐る恐る手を差し出し、頬に触れると、やはり普段よりも冷たかった。
手の平で包み込む。互いの温度が徐々にとけあっていくのがわかり、微かな拍動を感じた。
顔を近付けたところで、くーくーと寝息が聞こえた。
「……ふふ」
よかった、確かに寝ている。
この扱いを見るに、どうやら命に別状もなさそうだった。
心の底から安堵した。
そして、それと同時に、言いようもない不安にも似た感情が胸を刺した。
まるで手が届かない。目の前にいるのに手が届かない。
自分の知らないどこかでこうして危険に見舞われていることを知りつつも、それをどうしようもできない歯痒さ。
身替わりになることもできなければ、止めることもできない。止めようとして止まる人間ではない。
そもそも南郷自身も、彼を止めたいとは思っていなかったが。それは彼の生き様に魅了された人間の一人として、行く末を見守りたいと思いつつ、しかし、と南郷は思う。
しかし、命の恩人であり、落ちるばかりだった己の人生の転機となったこの青年の、ただ人の子としての彼がどうしても心配だった。
こうして傷ついた姿を見れば、替わってやれるものなら替わってやりたいと思う。大きな世話だと言われるのだろうが、こうして弱った赤木は見るに耐えないのだ。
 
コンコン、ドアをノックする音が聞こえ、振り向いた。見ると看護婦が戸口に立ち、そろそろ帰れといった視線を投げかけてくる。
南郷は慌てて、そして手に持ったままの林檎にやっと気付いた。
先程受け付けの窓の脇に積み上げられた林檎を見つけ、無理を言ってひとつ分けてもらった林檎だった。もし赤木が起きていたら剥いて食わせてやろうと思ったのだが、そういえばナイフも包丁も持っていなかったし、そもそも赤木は寝ていたし、どちらにしても無理だったのだろう。
さてどうしたものかと逡巡した後、ベッドサイドのノートに目を留めた。
林檎を置くと、さっと書き置く。
丸々と紅いこの林檎に、赤木は気付くだろうか。誰が置いたとも知れないこの土産に興味ないねとそっぽを向くのだろうか。それとも、躊躇無くかじりつくのだろうか。

赤木が身じろぐ。
僅かに体勢が傾ぎ、しかし寝息は深いまま。白いまつげの縁取る瞼は閉じたまま。
やはり覚醒はまだまだ先のようだった。
南郷は一度撫でるように髪をすいた。
幾度も幾度も触ったその感触は、記憶と寸分も違わぬままだ。 


*****
 
いつの間にか落ち着いていた息を、深々と吸い込んだ。
病院の出入り口から見上げた空には雲があるばかりで、先程までの雨は嘘のようにぴたりと止んでいた。
がたがたの舗装をされた道を、みずたまりも気にせずに歩いた。どうせこのスーツはクリーニング行きだ。今更気にすることも無い。
水のあふれた用水路の脇をうつむいて歩きながら、南郷はまた白髪の青年に思いを馳せた。
自分がどうしたところで、彼は己の思う道を突き通すのだろう。周囲の望むまま、己の生の望むままに。その生き方は、いずれ自分との道を決定的に分かつのだ。予感ではなく、これは確信だった。
今だって、周囲の取次ぎや、彼の気まぐれで繋がっているだけなのだ。
南郷からはコンタクトを取ろうとしたところで見つけられるかは運次第、何かの妨害が入ったら、それこそ永久にまみえることなどなくなる。
そんなのは当たり前のことで、今更何をというところではある。
しかし、今日のように、間近で彼の傷ついた姿を見ると実感するのだった。そして愕然とする。
自分のあずかり知らないところで彼はいつ果てるかも知れない、多くの若者よりもその確率は段違いに高いのだという現実に。

雨上がり、四方八方で蛙がうるさく鳴いていた。
革靴がアスファルトを叩く音も掻き消えるほど。
過ぎやる町並みは水にぬれ、くすんだ色をしていた。

水場を過ぎると今度は虫の音が盛った。
蛙の声すら掻き消えるほど。
軒先からこぼれた雨水は次から次へと地面を叩いた。

夜の道、人の皆無な田舎道を南郷はふと振り返った。

雨の上がった空には黒々としたままの雲があった。
重なり合ったその隙間から、雲間を照らす星。
それは青白くて力強い、まるでかの人のように不思議と人を魅了する光だった。
そしてそれは、永劫、手の届かない光だった。


***
もっとちゃんとお題出すはずだったんだけど雰囲気だけになってしまたorz


お題提供 Eciton Burchelli
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